最高裁判所第一小法廷 昭和30年(オ)15号 判決 1958年8月28日
主文
原判決中添付図面(へ)(ハ)”(ニ)”(ホ)(ヘ)の諸点を結ぶ線内の土地明渡を命じた部分に関する上告を棄却する。
原判決中上告人らの控訴を棄却した部分および添付図面(ほ)(は)”(ハ)”(ヘ)(ほ)の諸点を結ぶ線内の土地明渡を命じた部分を破棄し、これらの部分に関する本件を高松高等裁判所に差し戻す。
第一項の部分に関する上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告人田中トナ外一〇名代理人宇都宮潔の上告理由第一点、第二点について。
原判決はその主文において「原判決(第一審判決)中控訴人三上晴子勝訴の部分を除きその余を取消す。被控訴人等は控訴人三上晴子に対し別紙図面(ほ)(は)”(ハ)”(ヘ)(ほ)の諸点を結ぶ線内の土地及び(ヘ)(ハ)”(ニ)”(ホ)(ヘ)の諸点を結ぶ線内の土地を各明渡すべし」と判示した。
しかし、原審の維持した第一審判決中、被上告人(原告)三上晴子勝訴の部分に当る土地の範囲を、第一審判決添付の図面及び同判決理由と照合すると、同人の請求を認容した部分の符合中、すくなくとも甲(は)”(ほ)(ト)”(ヲ)の諸点は現地特定の説明を欠き、原判決の判示によるも、これらの諸点は明らかにされていないのであつて、結局同人の請求の範囲、勝訴、敗訴の部分は内容不明たるを免れない。また原判決中、控訴人らが控訴人三上晴子に対し明渡すことを命ぜられた土地の部分を指定する符号中、(ほ)”(ほ)の諸点は原判決判示中に現地特定の説明を欠いており((に)(ル)点の所在は添付図面の説明により明らかであるとしても、(に)点と(ル)点とを結ぶ直線上に(は)”(ほ)の諸点が存在することは明らかにされていない。)、原判決が明渡しを命じた添付図面(ほ)(は)”(ハ)”(ヘ)(ほ)の諸点を結ぶ線内の土地は、現地特定を欠きこれまた内容不明のものといわざるを得ない。原判決はこれらの点において審理不尽、理由不備の違法あるものというべく、所論第一点、第二点は理由あるに帰し、原判決はこの点において破棄を免れない(但し、原判決が明渡しを命じた(ヘ)(ハ)”(ニ)”(ホ)(ヘ)の諸点を結ぶ線内の土地については、右各点は添付図面と原判決の説示に徴し、現地につき特定していると認められる。)。
同第三点について。
取得時効による不動産の所有権の取得についても、登記なくしては、時効完成後当該不動産につき旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対して、その善意たると否とを問わず、時効による所有権の取得を対抗し得ないと解するを相当とするから、所論は採るを得ない(大正一四年七月八日大審院判決、民集四巻四一二頁参照)。
よつて、民訴四〇七条一頃、三九六条、三八四条、九五条、八九条により、裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫)